【2023.02】「寝たきりで起こりやすい褥瘡(じょくそう)床ずれのケア」について

今月のテーマは「寝たきりで起こりやすい褥瘡(じょくそう)床ずれのケア」について
形成外科がご専門で、在宅医療での褥瘡ケアに詳しい、「ぴあ訪問クリニック」の「理事長 弓削 悠理 先生」にお話を伺いました。

褥瘡とは圧迫やズレにより生じる傷のこと

褥瘡(床ずれ)は、寝たきりなどで体の一部に持続的に力がかかり続けるとその圧迫されている場所の血流が悪くなることで、皮膚の一部が赤みをおびたり、皮膚が破綻して傷ができることをいいます。皮膚の表面には毛細血管が走っていて、その血流によって皮膚に栄養が運ばれています。

しかし、体の一部に持続的に力がかかり続けると、血管が圧迫されて、皮膚に栄養が届かなくなり、皮膚の組織が死んでしまいます。これが、褥瘡の原因です。寝たきりの方や長時間同じ姿勢で座ってないといけない車イスの方、麻痺があって動けない方などは生じやすいので注意が必要です。

褥瘡

褥瘡の3大外的要因は「圧迫、湿り気、ズレ」

褥瘡ができやすい要因には、大きく分けて3つあります。

1つ目は「圧迫」です。およそ手のひら1枚分程度の同じ部位に、中型のリンゴ1個分(およそ200g)の圧力がかかり続けるとできやすいとされています。

2つ目は「湿り気」です。汗や尿、便などで汚れていたり、おむつで常に湿った状態だったりすると、皮膚が弱っているため外からのダメージを受けやすくなります。

3つ目は「ズレ」です。状態を起こすときなどに、皮膚の表面と皮下組織が”ずるっと”ずれると、一瞬にして褥瘡ができてしまうことがあります。

褥瘡ができやすいのは、骨が出っ張っていて、脂肪が少ない部分

褥瘡は骨が出っ張っていて、脂肪が少ない部分にできやすいという特徴があります。車イスに乗っている場合には、足が常に車イスにあたっている膝から下の部分(下腿:下腿)、も褥瘡ができやすくなっています。

低栄養状態だと褥瘡が生じやすい。栄養補助食品も活用を

低栄養状態(アルブミン3g/dl以下、ヘモグロビン11g/dl以下)だと褥瘡が生じやすいので、出来るだけ炭水化物やたんぱく質などの栄養を摂ることが大切です。口からあまり食べられない場合には、栄養補助食品なども活用してください。

”消えない赤みは”、褥瘡の第一段階。発見したらすぐ対策!

褥瘡はひどくなってからだと、なかなか治らないことが多いので、早期発見をしてケアをすることが大切です。皮膚に消えない赤みや水ぶくれがあったり、こすれる部分の皮膚が固くなっていたら要注意です。➀毎日観察をする。➁除圧を徹底する。➂保湿をする。これら3つの対策をすぐに始めてください。

褥瘡を防ぐためのケアQ&A

褥瘡(褥瘡)はできる前に予防をすることが重要です。自宅介護の際に、どのように対策をしたら良いのか。採択療養での褥瘡ケアに詳しい、「さくらクリニック練馬院長・佐藤志津子先生」に引き続きお伺いしました。

Q.褥瘡を予防するために、大切なことはどんなことですか?

A.きちんと毎日、身体を看てくれる人がいること。そして、できるだけ口からお食事を摂ることです

褥瘡を予防&早期発見して重症化する前にケアをするには、毎日、患者さんのお身体を看てくれる人がいるかどうかが決め手になります。ご家族の方や介護ヘルパーさん、訪問入浴スタッフの方、訪問看護師さんなど、どなたでもいいので、毎日、お身体の変化をきめ細かく看てあげてください。そして口からお食事を摂ることも大切です。低栄養状態ですと褥瘡ができやすく治りも遅くなりますので、栄養補助食品なども上手に取り入れながら、お食事は無理のない範囲内で傾向で摂るようにしてください。

Q.皮膚はどのような状態を保てばよいのでしょう?

A.何よりも保湿が大切です。塗りやすい形状(基剤)の保湿剤を使ってください。

スキンケアの基本は保湿です。特にご高齢の方は、お肌が乾燥しやすく、皮膚の「バリア機能」も低下しているので、毎日の保湿で皮膚の機能を維持し、褥瘡を予防することがとても大切です。例えば、保湿剤のうちヘパリン類似物質は、どんな形状(基剤)でも薬剤成分の濃度は同じですから、軟膏、クリーム、ローション、フォーム(泡)などの中から、ご本人や介護者にとって使いやすいものを選んでください使いやすいのはフォーム(泡)タイプで、両手でバ~っと塗り広げられるので便利です。ローションタイプはひんやりするので、患者さんによっては嫌がられるかもしれません。形状別に正しい塗布の仕方はありますが、塗り方にこだわるよりも、毎日確実に保湿をすることの方が大切ですよ。

Q.体位交換の際、気を付けることを教えてください。

A.できるだけ、2人ペアで行い、身体をひきづったりして皮膚をこすらないようにしましょう。

褥瘡は、圧迫だけでなく、皮膚を強くこする(ずれが生じる)ことでも発生します。力の弱い人が体位交換を一人で行うと、どうしても患者さんを引きづってしまい、皮膚をズルっとこすることにつながります。皮膚の表面と、皮下組織のズレは、褥瘡の原因となりますので、体位交換はできるだけ、2人のペアで行ってください。また、服やシーツのしわも、皮膚のズレや圧迫につながりますので、しわはきれいに伸ばしておきましょう。

Q.褥瘡予防のグッズは購入した方がいいのでしょうか?

A.タオルやクッションなど、家にあるものでも十分対策は可能です

褥瘡を予防するためのグッズは、様々なものが市販されていますが、家にあるタオルやクッションなどを使うことでも、十分対策をすることはできます。訪問診療をおこなっている医師や看護師などに相談しながら、家の中であるものを活用して、出来ることを一緒に考えていきましょう。

Q.褥瘡ができてしまった場合、どのようにケアをしたらよいですか?

A.患部をしっかり洗うことが大切です。褥瘡のポケットは綿棒などをつかって洗浄するなど、医師の指示に従ってケアしましょう

褥瘡ケアの基本は洗浄です。人肌程度のお湯を使って、指の腹でこすって洗うことが大切です。特に褥瘡のポケットの中は汚れや菌がとどまりやすいため、綿棒などでしっかりこすり洗いします。塗布してあった外用薬も毎回しっかり洗い落としましょう。幹部の黄色くなっている不良な肉芽部分は洗いながら取っていきます、また、お尻とお尻がこすれる部分(お尻のわれめ部分)は、ピンポン玉1個分くらいのプロペトを詰めておくなどの対応をとると、皮膚のこすれを抑えられるので褥瘡予防につながります。

Q.褥瘡のことで困ったら、誰に相談すればいいですか?

A.褥瘡の特異な先生や、WOC(ウォク)ナースと呼ばれる、皮膚・排泄ケア認定看護師に相談してみましょう。

褥瘡の治療とケアは時間もかかり、地道な対応が必要なため、なかなか親身になって診てくださることは少ないかもしれません。褥瘡のことでお困りの場合、褥瘡を得意としている医師(形成外科、皮膚科)や、WOCナースと呼ばれる皮膚・排泄ケア認定看護師であれば、褥瘡やストーマ(人工肛門)、失禁などによって生じるトラブルに対して、専門的な知識や技術を用いて相談に乗ってもらえます。インターネットで「WOCナース 一覧」で検索すると、日本看護協会のホームページが出てきます。そのページから、都道府県や施設の種類別にWOCナースがどの医療機関や施設に在籍しているのかを探すことができます。

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今回の情報に加えて、簡単なトレーニング方法や気分転換になる頭の体操も掲載している、孫の手だよりのpdfデータを以下からご覧いただくことができます。

取材・文/医療ライター渡邉由希

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