【2023.06】在宅医療にとって大切なこととは

在宅医療の本質は患者さんの背景まで含めて診る

ある調査によると、およそ6有の方が病院ではなく”住み慣れた自宅で最期を迎えたい”と回答しています。しかし看取りまでしてくれる医療機関は多くなく、現場では課題が山積みしています。在宅診療の現場で多くの患者さんを診るなかで、より良い在宅介護のありかた”三鷹モデル”を提唱してきた東郷医院院長の東郷青児先生にお話を伺いました。

”在宅医療とはなんぞや”誰もわからないまま始まった

国が”在宅医療・介護を推進しよう”と明確に意思表示をしたのが、2013年の「5カ年医療計画」でした。在宅医療を推進するに至った背景を少しご紹介します。戦後の昭和20年代は、入院のできる医療機関が足りておらず、病気になっても基本は在宅療養で、必要な際には近医を呼びに行っておうしんしてもらっていました。

その後、1961年に国民皆保険制度が導入され、同時に救急車や救急外来が徐々に整備されました。国民が気軽に医療機関を受診することができるようになったのは、高度経済成長期の1970年代に入ってからです。それまでほとんどの人は自宅で最期を迎えていたのですが、1976年には医療機関で亡くなる人の割合が自宅で看取られる人の割合を上回ります。

そして高齢化社会に突入します。2025年には75歳以上の人口が2000万人を超え、いわゆる”2025年問題”が待ったなしの状況です。しかし医療財政や医療資源(施設や人材)の逼迫により、病院ですべての人を看取るのは難しいという判断から、在宅医療・介護へと大きく舵を切ります。もちろんそこには、住み慣れた自宅で最期の時を過ごしたいという、多くの国民の声が背景にあったのも確かです。

こうして、自宅を中心に医療・介護を提供する、地域包括ケアシステムがスタートします。しかし誰もが”在宅医療・介護”とはなんぞやという状態で教えてくれる人もおらず、手探りでのスタートでした。現在も地域包括ケアシステムおよび、在宅医療自体がうまく機能しているとは言えず、問題が山積みしています。

褥瘡

その患者さんが持つ”すべての病気”を診る

在宅医療とは、文字通り自宅で医療行為を受け、療養することです。そこには、普段通りの生活があり、自己の存在意義が確認でき、希望が持てる時間が流れています。病院では、自分と一体化した時間や空間は作りにくいですから、大きな違いがあります。在宅医療で大切なことを上げてみます。

1.在宅医療では、患者さんが患っているすべての病気を診る

ある意味”専門なし”ともいえる専門家として、全人的医療を行います。必要な時には患者さんの希望を踏まえて専門医につなぎ、時と場合によっては、検査や治療をしないことも選択肢の一つになります。

2.患者さんの心を診る

患者さんの希望や本音を理解し、出来るだけ叶うようにします。病気だけでなく、抱えている悩みや心配にも寄り添うことが大切です。

3.患者さんの置かれている背景も理解する

居住環境や家族との関係、家族の健康状態、友人関係、その方が生きてきた歴史、仕事、趣味などの状況、価値観、死生観などです。これれすべてを理解してうえで、患者さんを診ることが大切になります。

4.多職種の専門職チームと連携する

看護師や、薬剤師、各種療法士(理学・言語聴覚・作業)、ケアマネ、介護ヘルパー、訪問マッサージ、歯科医師など。在宅専門職チームと連携して患者さんを支えることが大切です。

5.医療者の価値観を押しつけない

治療の主体は患者さんです。ご本人やご家族に価値観や考えを尊重することが大切です。

6.”安心”を感じてもらえる存在に

自宅での療養・介護は不安や心配と隣り合わせです。安心して過ごしていただけるよう医療者は全体を把握しつつ、常に患者さんのかたわらにいることが大切です。

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