【2023.03】「高齢者の肺炎予防」について

在宅医療の現場で、高齢者の診療を行っている、さくらクリニック練馬院長の「佐藤 志津子先生」に、高齢者の肺炎予防についてお伺いしました。

元気がない、呼吸が浅く早い、ボーっとしている。それは肺炎かも

肺炎で亡くなる方んお98%を65歳以上の方が占めているため、肺炎予防は高齢者にとって非常に重要なテーマです。一般的に多いのが「市中肺炎(感染性肺炎)」、高齢者に多いのが「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」です。「市中肺炎」は、日常生活を送る中でウイルスや細菌に感染するもの。「誤嚥性肺炎」は食べ物や唾液が、間違って気道に入ることで細菌に感染するものをいいます。

体力が衰えている、持病があるなど、抵抗力が落ちているとかかりやすい

肺炎は、抵抗力が低下しているとかかりやすく、高齢の方や、糖尿病や、呼吸器疾患、心疾患、がん、関節リウマチ、神経難病などの持病(基礎疾患)、脳卒中の後遺症などを抱えている人は注意が必要です。また、認知症の方も、食べ物を飲み込むことが正常にできなかったり、日常生活を普通に送ったりするのが難しいことが多いので、肺炎に注意する必要があります。

誤嚥性肺炎

ご高齢の方は、持病を持っている方も多いので、感染症に気を付けて!

恒例の方はもともと体力や免疫力が落ちている上に、持病のある方が多いので、インフルエンザや新型コロナ、風邪などの感染症にかかると、抵抗力が低下してしまい、肺炎にかかりやすくなります。風邪が流行っているときは大勢で集まるのを避ける、うがいと手洗いをまめにする、密閉された空間で人と話すときはマスクを着用するなど、基本的な感染対策をすることが大切です。頃中で身についた集患をそのまま実行していきましょう。

誤嚥性肺炎

肺炎にかかっても、高齢者は症状がわかりにくい

肺炎にかかると38度を超える高熱が続く、湿った咳が出てきたない痰がたくさん出る、呼吸が苦しくなるなど、一般的な風よりも重い症状が現れます。しかし、高齢者では、肺炎の典型的な症状が目立たず、なんとなく元気がない、食欲がない、ぼんやりしている、認知症の方だと症状が進んだように見えるなど、ばくぜんとした変化しかなく、肺炎発症に気づかれにくいことがあります。ご家族が「なんとなくおかしい」と感じたら、早めにかかりつけ医や、訪問看護師などに相談してください。

誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)

高齢者では、食べ物や唾液が気道に誤って入ることで起こる誤嚥による肺炎も

食べ物は、口から食堂を通過して胃へ入ります。しかし、間違って機関に入ってしまうことを誤嚥と言います。誤嚥性肺炎は食べ物や唾液などと一緒に、細菌が肺に入ってしまうことにより発症します。

体の抵抗力が低下している状態で、口腔内の常在菌が気道に入ると発症することが多い

誤嚥性肺炎は、一般的に、食べ物が誤って気道に入ることで起きると思われています。しかしたとえ絶飲食にしていても、唾液が気道に入るだけで発症することも多々あります。体の免疫力が低下している状態で、口腔内の常在菌が気道に入ることで肺炎が起きるためです。誤嚥性肺炎の予防のためには、口腔ケアを丁寧に行っていくことが重要です。

食べ物が気道に入ってもむせず、誤嚥に気づかないことも

高齢者が食べ物を誤嚥しても、ゴホゴホむせず、ご本人も、周囲の人も気づかないことがすくなくありません。これを”不顕性誤嚥(ふけんせいごえん)”といいます。不顕性誤嚥は加齢ともない、嚥下反社と呼ばれる、食べ物が気管へ入らないようにする機能が低下し、機関の感覚が鈍くなると起こりやすくなります。寝たきりのお年寄り、認知症の方は特に注意が必要です。

元気がない、食欲がない、いつもよりボーっとしているけど認知症の症状が進んだのかな?といった変化があっても、まさか肺炎とは思わないかもしれません。「むせてなくても、ひょっとしたら誤嚥しているかも…」と考えることができれば、誤嚥性肺炎の早期発見につながります。

誤嚥性肺炎に関わる持病

高齢者の肺炎予防Q&A

高齢者を肺炎から守るために、どのようなことに気をつけたらいいでしょうか。食事の工夫や口腔ケア、ワクチン接種などについて「さくらクリニック練馬院長・佐藤志津子先生」に引き続きお伺いしました。

Q.誤嚥性肺炎を予防するために、食事はどのように工夫したらいいですか?

A.パサパサしたものや、張り付きやすいものは飲み込みにくい。その方に適した”とろみ”をつけて

嚥下機能が低下していると、パンや、海苔、お餅やお団子などは飲み込みにくくご縁の原因になってしまいます。食材を細かく刻む、柔らかくする、とろみをつける等、食べやすい工夫をしてください。ただし、とろみは、その方に適した粘度でないとかえって飲みにくくなってしまいます。できれば専門家の指導を受けることをおすすめします。

Q.誤嚥性肺炎予防の口腔ケアとは具体的に何をしたらいいのでしょうか?

A.訪問歯科の先生や、衛生士さんに来てもらい、入れ歯や口腔内の清掃、嚥下指導をしてもらいましょう。

食べ物を誤嚥しにくいよう食べ物の形状を工夫しても、誤嚥性肺炎はおきます。口の中の細菌が、知らず知らずのうちに唾液と一緒に気道に入ってしまうのです。特に免疫力が低下しているご高齢の方、脳卒中や神経難病などの基礎疾患を抱えている方は要注意です。口腔内が清潔でないと、肺炎の原因となる細菌がますます増えて、肺炎発症のリスクが高まりますので、口腔内のケアをしっかり行うことが大切です。日々の口腔ケアはもちろん、歯肉炎、歯槽膿漏などの病気を治療し、定期的にプロの口腔ケアを受けることも大切です。特に寝たきりに近く、ご自身や家族で十分なケアができないかたは、訪問歯科医や、歯科衛生士の方に関わっていただくことをおすすめします。

Q.寝たきりで食がどんどん細くなっています。誤嚥性肺炎の予防のためにも胃ろうを検討して法がいいのでしょうか?

A.胃ろうを作っても誤嚥性肺炎はなくなりません。作るか否か、ご本人の意思確認は早めにしておいて

胃ろうとは、おなかにあけた孔に、チューブを通し、直接位に食べ物を流し込むことです。胃ろうを作って絶飲食にしたとしても、唾液を誤嚥捨て場、誤嚥性肺炎はおきてしまいます。寝たきりで免疫力が低下し、不顕性誤嚥を繰り返す高齢者の場合、胃ろうを作っても生命予後は改善しません。胃ろうをつくるかどうかは、ご本人が判断できなければ、最終的にご家族の判断にゆだねられます、人生の質についてよく考えたうえで、慎重に判断する必要があります。できれば元気なうちに、食べられなくなったらどうしたいかを、ご家族で話し合っておくことが大切かもしれません。

Q.肺炎予防のために、肺炎球菌ワクチンを受けた方がいいですか?

A.肺炎球菌ワクチンは、市中肺炎を予防するためのもの。リスクがある人は接種を

普通に日常生活を送っている中で、感染する市中肺炎の原因微生物には、肺炎球菌やインフルエンザ菌(※1)、マイコプラズマなどさまざまなものがあります。このうち、肺炎球菌がもっとも多くを占めるとされています。高齢者で、ある程度社会生活をされている方は、感染リスクもそれだけ高いですから、肺炎球菌ワクチンの接種を受けた方がいいかもしれません。

※1.インフルエンザ菌は、インフルエンザを発症させるウイルスとは全く別物です。

Q.誤嚥性肺炎は、完全に防ぐことは難しいのでしょうか。

A.重度の嚥下障害のある方では、誤嚥をゼロにすることは難しいです。うまく付き合っていくことが大切です。

近年は高齢化に伴い、誤嚥性肺炎で亡くなる方が増えてきています。高齢で寝たきりになり、嚥下機能、免疫力、端を吐き出す能力などが落ちていくと、誤嚥性肺炎を完全に防ぐことは非常に難しいです。誤嚥性肺炎は「治す」のではなく、老化の最終段階として「上手に付き合ってゆく」と、気持ちを切り替えた方がいいかもしれません。人生の最終段階で、食べられなくなって、少しずつ粘れるように終わりを迎えることはある意味自然なことです。それを受け入れたうえで、できる工夫をしていきましょう。

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今回の情報に加えて、簡単なトレーニング方法や気分転換になる頭の体操も掲載している、孫の手だよりのpdfデータを以下からご覧いただくことができます。

取材・文/医療ライター渡邉由希

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