【2024.05】「肺腺ガンの早期発見」について

今月のテーマは「肺腺ガンの早期発見」について

50歳を超えると、ガンに罹患する人が増えます。ガンは”早く見つけて早く治療すること”が何より大切です。
肺ガンのうち、およそ6割を占めるのが、女性・非喫煙者に多い「肺腺ガン」と呼ばれるタイプです。
肺ガンというと喫煙している人のリスクが高いと思われがちですが、肺腺ガンは女性の患者さんが7割を占めその多くは喫煙経験がありません。
近年増加している肺腺ガンはどのような病気で、どう早期発見をしたら良いのか、ガン医療に詳しい、高山医院副院長「宮内 洋 先生」にお話を伺いました。

肺腺ガンとは

〇 女性に多く、非喫煙者も発症、初期にはほとんど症状が現れない

肺がんには、出来る部位や組織型によって大きく4つのタイプも分類されますが、肺腺ガンは、肺野という肺の奥の方(枝分かれした気管支の末端)にできやすいガンです。
患者さんの7割は女性が占め、喫煙経験のない比較的若い女性にもみられます。肺の奥の方にできるため、初期にはほとんど症状がありません。

早期発見の重要性

〇 ガンが1~2センチくらいの段階で発見をして、治癒を目指す

がん細胞は10~20年かけて、レントゲンなどで見つけられる大きさ(1センチほどの細胞のかたまり)になります。さらにそこから1~2年ほどで倍近くの大きさに成長します。可能であっれば1~2センチの治癒可能な段階で発見し、早期に治療をしていきましょう。

〇 早期発見のために

肺腺ガンは、初期にはほとんど症状がありませんから、早期発見のためには毎年肺ガン検診を受けることが大切です。1~2センチのガンは、1~2年放置するうちに倍の大きさに成長します。1~2センチの早期に見つけるためには、毎年検診を受けることが重要です。早期に見つけて切除をすれば、完治の可能性が高くなります。
肺ガン検診は、問診、胸部X線撮影、加えて肺がんのハイリスク群の方は喀痰(かくたん)細胞診という検査を行います。これは科学的な手法に基づいた研究により、導き出された予防(検査)方法です。
検診の機会を逃さず、ぜひ毎年、がん検診を受けるようにしてください。

がんの治療と仕事を両立するためにQ&A

Q.がんになると仕事は続けられないと考えてしまいますが、 実際はどうなのでしょうか

A.がんの診断や治療技術の進化には目を見張るものがあります。 まずは、 かかりつけ医に相談してみましょう

50歳を過ぎるとがんの発症リスクは急速に高まります。高齢になればなるほど、がんの発症リスクは高まるので、いずれはがんになるかもしれないという心構えでいたほうがいいかもしれません。 しかし、がんの診断および治療技術の進化は目を見張るものがあり、 10年前に行われていた治療が、 現在では古い方法 ということも少なくありません。特に、働き盛りでがんを発症すると経済的な問題が不安になりますが、治療技術は驚くほど進歩していますので、働くことをあきらめたりせず、まずは地域のかかりつけ医に、がんに関する相談をしてみることをおすすめします。

Q.最近のがん治療は、通院がメインだと聞きます。以前よりは仕事との両立がしやすいのでしょうか

A.国の政策として、がん患者さんの職場復帰継続がシステム的に進められてきており、かなり定着しています

最近のがん医療はめざましく進化しており、たとえば化学療法(抗がん剤など)の場合、週1回から月に1~2回のペースで通院して治療を受けます。初回のみ入院で投薬が行われることが多いですが、以降はほとんどの場合、通院となります。 また、がん患者さんの職場復帰は、国(厚生労働省)の基本方針「治療と仕事の両立支援」として推進されています。2016年には「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」が作成され、企業と医療機関がスムーズにやりとりするためのマニュアルも収載されました。
がん治療の主治医は、職場での配慮事項などを記載した「意見書」を作成し、患者さんに渡します。患者さんはその意見書を会社に提出し、企業はその意見書をもとに、産業医や患者さんの要望も聞きながら、両立支援プランを策定していきます。産業医は、会社に対して職場復帰の指針 (労働内容や環境など) について指示助言を行えるので、患者さんの不利益にならないようサポートを行っていきます。 職場復帰に不安や心配事がある場合は、主治医 (または地域のかかりつけ医)と、職場の産業医に相談してみてください。また「がん相談支援センター」などへの相談もおすすめします。

Q.病気のことを職場へ、どのように伝えるといいでしょうか。

A.まずは職場の産業医や、 福利厚生部門などに相談をしましょう

まずは、会社の労務や福利厚生を担当している部門、社員数50名以上の企業では安全衛生委員会に相談をしてください。産業医がいる場合には、そのドクターでも構いません。主治医(かかりつけ医)から産業医に紹介状を書いてもらうことも可能です。産業医には、どのように上司や同僚へ伝えるといいか、相談に乗ってもらいましょう。相談する際は、病名、進行度、治療の状況などのデータを持参するとスムーズです。

Q.経済面での不安が非常に大きいです。 相談できるところはありますか?

A.がん拠点病院では「がん相談支援センター」へ相談を。使える助成・支援制度を教えてもらえます。

がん拠点病院地域がん診療連携拠点病院)には、がん相談支援センターが置かれています。 ソーシャルワーカーやや専門看護師などが、治療や生活面だけでなく、助成・支援制度、介護福祉サービスなどについても相談に乗ってくれます。また、制度面では、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費(全ての医療機関や薬局の合算)が上限を超えたときには(1日から末日まで)その超えた額を支給する高額療養費制度があります。
さらには限度額適用認定証を受けることで、医療機関に支払う1か月分の医療費が、 一定の金額 (自己負担限度額) までとなる方法があります。詳しくは職場の福利厚生担当部門や、各自治体の窓口でお尋ねください。